熊本地震でバランスを崩した心と身体を、薬膳(中医学)的見地からケア (2)

前記事の続きです。前回、地震による恐怖心から腎をいためてしまう傾向にあることを書きました。その症状を受けて、我が家に療養に来た友人へ作ってあげた薬膳粥について触れてみます。

補腎メニューよりも、まずは気を補う山芋の薬膳粥を朝食に!


「腎を労るメニューを考えなければ…。いや、その前に気を補うことが先か。五行からみる季節の食養生でいくと、腎は冬にあたる。いまは春なのに、冬メニューでもいいのか!? でも、肝よりは腎のケアが先決でしょう?」。気も焦る手前、頭の中でちょっと混乱してしまった私は、中国人の薬膳の恩師に電話。事情を話し訊いてみると、「いま最も優先すべきは季節よりもその人の証!」という確実な回答をいただきました。そうだった、そうだった(*^_^*) すぐにこうして対応してくれる先生に感謝しながら、証に沿ってまずは補気メニューを考えることにしました。ここでいう証(しょう)というのは、西洋医学でいうところのカルテのようなものでその人の体質や症状のことをさします。

度重なる余震による恐怖心から腎をいため、気が下がったことにより、胃腸の機能も低下。そこで、補気食材と考えた場合、百合根や山芋が適しているのですが、あいにく近所のスーパーには百合根はなかったので山芋を使うことに。メニューは消化しやすくて胃腸に負担をかけない、薬膳粥を作ることにしました。山芋は中国では「山薬」(さんやく)と呼ばれていて、漢方薬にも使われているほど。気を補い消化機能を高める上に、脾、肺、腎の機能をも高め、滋養強壮にも効果を発揮します。

山芋薬膳粥の作り方


作り方は中国粥を作る要領で、生米から作るのがポイントです。米に対して水の量はその10倍。この水がドロドロになり、ねっとりしてくるまで炊きます。このとろみを米油というのですが、これこそが高麗人参にも勝る滋養があると言われています。今回、粥に入れた食材は山薬(山芋)と枸杞の実。味付けはあえて何もせず、お好みで鮭、大根葉とじゃこの手作りふりかけ、辛子明太子をトッピングして食べてもらうようにしました。

【作り方は簡単!】

1.土鍋に米の量に対して10倍の水を入れる。吹きこぼれやすいので、できるだけ深い土鍋がベスト。
2.中火で20分ほど炊く。今回は一口大に切った山芋は10分ほど経った時点で土鍋に投入。
3.  一旦火を止めてしばらく鍋を休め、落ち着いたところでさらに火を入れる。すると、より米油も出てきてドロドロに。
4.  器に盛り、枸杞の実をのせてできあがり!

 

食した友人の感想は…「食べ終わっても身体の芯がポカポカする」

この山芋薬膳粥を食べた友人の感想は…「山芋がほくほくしていておいしい」「食べ終わっても身体の芯がポカポカする」「額に汗をかいた」などなど。今は熊本もライフラインが整って、一部を除いてほとんどの家庭が普通の生活ができているので、ぜひともこの山芋薬膳粥を作っていただき、より元気になってもらいたいな〜と思っています。
 
【使った食材の薬膳データ】
■ 山芋…滋養強壮のほか、消化吸収を促す効果も。体質/気虚・陰虚、五性/平、五味/甘、帰経/脾・肺・腎
■ 枸杞の実…古くから滋養強壮、不老長寿の妙薬と知られる。肝や腎の機能を高める。体質/陰虚・血虚、五性/平、五味/甘、帰経/肝・腎・肺
■ 鮭…温性の食材で胃をあたためるため、胃腸の働きを高め、水分代謝を促したり、むくみを解消したり、血の巡りもよくしてくれる。体質/気虚・血虚・気滞、五性/温、五味/甘・鹹、帰経/脾・胃

※ 参考資料:日本中医食養学会編著の『現代の食卓に生かす「食物性味表」』

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