昨年(2015年)の暮れ、12月23日と30日に某デイサービスへランチを作りに出向きました。ちょっとタイムラグがある記事です。これも後に続く「薬膳うちごはん」のレッスンに導かれた大きなきっかけになったので、備忘録として綴ります。
いきなり決まった出張「薬膳うちごはん」。デイサービスのランチ作り
いま考えても本当にいい経験をさせていただいたなぁと思います。年末にグループホームやデイサービスを経営する社長さんに年始の取材をお願いに行ったら、年末にデイサービスのランチ作りを任せてもらえるという、なんともありがたいお話をいただきました。この社長さんはちょうど10年前にも取材させていただき、それを機に友人関係に。おそらくお互いに信頼関係があったからこそのお話だと思いますが、心から感謝して快諾することにしました。とはいえ、引き受けた時はお皿に料理を盛りつける程度のお手伝いだと勝手に考えていたのですが、蓋を開ければメニュー作りから。しかも、ごはん、汁物、メイン、小鉢3皿、3時のおやつまで入れて一人●百円という括り付きです。さすがの私も少々慌てました(^_^;) メニュー考案もさることながら、どんなキッチンなのか見たこともないし、第一25人分の料理なんて作ったこともありません。正直、私は大丈夫なんだろうか? と首をかしげましたが、前向きに捉えて取り組むことにしました。
ケーキ付きクリスマスメニューを考案。メイン料理にもクリスマス仕様
もっと引きの写真があればよかったのですが、初回はもう心の余裕が全くなくて…。スタッフさんが撮ってくださった写真をお借りしました。23日はクリスマス仕様というお題が出て、すごく悩みました。問題はケーキです。料理は大好きな私ですが、材料をきっちり計らなければならないスイーツ作りはどうにも性に合わず。ケーキなんて20数年間、一度も作っていません。だけど、ケーキのないクリスマスなんて…やはり寂しいですよね。しかし、ケーキを買う予算もありません。そこで一念発起。考えた挙げ句、形が崩れても気にならないソフトクリームチーズケーキを大きめのタッパーに作って、当日はカップに入れる盛りつけで対応しました。
・白ごはん
見た目オシャレで味もいい。沖縄、金沢の郷土料理を散りばめて!
当日、そのデイサービスに行ってみて初めて分かったのですが、なんとキッチンは私の苦手なIHではありませんか! 慣れてないので、実はちょっとしたハプニングもあったのですが、そこはどうにか事なきを得ました。2回目の30日はこのIHを回避するため、スチームオーブンを使う「鮭と野菜のハーブ蒸し」をメイン料理にもってきました。料理って、味や栄養バランスも大切ですが、食べるのがちょっと楽しくなるような演出も大事。そこでペーパーも一緒に使っちゃおうという魂胆です。ハーブは月桂樹を使いました。お年寄りがまちがって食べてはいけませんので、蒸し終わった後はお箸で取り除いておきました。
特にデイサービスを利用なさっているお年寄りは食べることが何よりもの楽しみだとおっしゃいますから、まずい時はまずいと言って何も食べない徹底ぶりです。これは作り手にとってかなりのドキドキもので、お年寄りの反応がすごくきになりました。
30日のメニューは…
今回はよく取材に行っている沖縄の郷土料理と、私の生まれ故郷である金沢のおせち料理を小鉢に加えました。年末だし、少しお正月気分を味わってもらうのもいいんじゃないかと。何より九州の人たちは金沢のえびすを知らないので、ご紹介したい気持ちもあったのです。えびすは寒天に生姜を入れただし汁、砂糖、溶き卵を入れてかためたもの。とても上品な一品で、金沢では祭事やお正月に食べる郷土料理です。おかげさまでこちらも大好評。みなさん喜んで食べてくださいました。
3時のおやつは、杏仁豆腐 枸杞の実のせ。今回は見ての通り、薬効食品は枸杞の実ぐらいでほとんど使っておりません。というのも、お年寄りはやはりお薬を飲んでいる方も多いし、一人ひとりの体調を考えながらのメニュー作成は25人もいるので絶対に不可能です。それでもできる限りのことを尽くしました。両日ともに味、栄養のバランスに加えて頑張ったのが、見た目の演出。利用者さんの中には重度の認知症の方もいらっしゃったので、少々おこがましいですがまた食べることの楽しさを思い出してもらえたらなぁーという願いもあったのです。そのかいあって、配膳したのと同時にあるおばあちゃんが発した「わぁ〜レストランに来たみたい!」とおっしゃった時の満面の笑みは、生涯忘れないと思います。ありがたいことにほとんどの方が残さず、「おいしい、おいしい」とキレイに食べてくださいました。もちろん、すべて手作りです。ずっと立ちっぱなしだったので、足腰はガタガタ。またまた前日は仕込みに追われて、ほぼ貫徹状態だったのですが、お年寄りの満足そうな顔を見たら、疲れも吹っ飛び、やりきった充実感で満たされました。この経験値がいよいよ「薬膳うちごはん」のレッスンへつながっていくのです(続く)。