迫力満点!! 佐世保食肉センターへ潜入!
前回の記事の続きです。食肉のセリの見学に出向いたのは、佐世保食肉センター。会場に出向くと、すでに買い付け業者さんのせり真っ只中でした。どのお兄さんの表情も真剣そのもの。ちょっとした緊張感が漂っています。その空気感を体感する間もなく、すぐに視界に入ってきたのは、頭を落とされ皮も剥ぎとられて、半分に切られて足から吊された牛さんの姿でした。頭では分かっていましたが、実際に目にすると迫力満点。それと同時に、考え深いものがありました。
牛は意外と大きくて、軽く3メートルはあるでしょうか? 参考までに下に豚肉のせり風景の写真も載せてみましたが、一緒に写り込んでいるスタッフさんは同一人物ですから、これらの写真を見比べることで、大きさの比較ができるかと思います。
せりは枝肉から取れる肉の量や、脂肪や肉の締まり具合、光沢などで等級がわけられて格付けされていきます。格付けの詳細も書いていると、文字量が増えてしまうので、参考までにこちらのサイトのリンクを貼っておきますね。
→公益社団法人日本食肉格付協会
以前、漁港で取材させてもらったせりは、専門用語と早口でいったい全体何をおっしゃっているのか、全く理解できませんでした。まるでどこかの惑星の宇宙語のように聞こえていたのですが、食肉の場合は早口ではあるものの、耳をすませば内容はある程度は理解できます。流暢にずっと話しておられたのは、マスクのこの方!
情もへったくれもない。等級がすべて。厳密に選別されていく、せりの世界。
マイク越しに聞こえてきたのは、主に産地や歩留まり、肉質の等級、金額などです。これは同時にデジタルの画面でも表示されていますので、万が一聞き逃しても大丈夫! その画像も一応撮ってはいるのですが、生産者さんのお名前も書いてありましたので、もしも情報NGだったらいけないと思い、ここでは等級の相場の画像をば! イメージとすれば、こんな表示でそのような情報が随時流れていました。
(一応、取材時の撮影許可は全部OKいただいていたのですが…念のため!)
この食肉センターの機能をざっと紹介すると、まずセンターに肉が運ばれてきた後は、病気など持ってないかどうかの検査が行われます。その後、枝肉に解体され、内臓は処理されて計量。それらは徹底した温度管理の元、品質を落とさないように保管されています。
しばらくせりを見入っていると、素人目にも金額は単純に大きさではないことが分かります。格付けによって、残酷なまでに金額が全く違うのです。さらに、セリを落としていく業者さんを見入っていると、あーここは高級品を扱う店ね、そこはリーズナブルで買いやすい肉を卸している店なのかしら? ということも分かってきました。これもセリ見学の醍醐味なのかもしれません。
センターの方がおっしゃるには、なんと長崎和牛一頭育てるのに、経費は軽く120万円ほどかかるそう。つまり、原価が120万円。分娩してから出荷までは27〜30ヵ月かかるそうなので、生き物ならではのいろんなリスクを考えると、決して割りのいいビジネスではありません。長崎和牛の場合は種付けから生後10ヵ月までは繁殖農家さんが担当し、それから出荷までは飼育農家さんが受け持つそう。そんな実情を聞かされると、これまで以上にありがたく感謝していただかなければと思ってしまいました。
最後に興味を引いたのは、長崎はもともと壱岐牛、五島牛、雲仙牛、平戸牛など、すでにエリア名がついているブランド牛がある中で、なぜか長崎和牛というブランド牛があること。聞けば、長崎は全国でもトップクラスの種雄牛を親に持つ子牛を育てている産地。これらの子牛は全国に売られていくことが多く、全国に名を馳せるブランド牛も、実は生まれは長崎だったということも少なくないそう。そこで、長崎生まれ長崎育ちの和牛を県内で協力して育てていこうと誕生したのが、長崎和牛というわけです。前回の記事でも書いたように、長崎和牛はめでたく「第10回全国和牛能力共進会」で内閣総理大臣賞を受賞。名実ともに日本一の和牛になったのです。次回は長崎和牛をもっと気軽に食べてみたいわ! と思った方へ、とっておきのお店をご紹介します。
<取材協力>
佐世保食肉センター